民泊とは?ホテル・旅館・ゲストハウスとの違いや仕組み、メリット・始め方を解説

旅行や観光の宿泊先として、すっかり身近になった「民泊」。

一方で、「ホテルや旅館とは何が違う?」「普通の家を貸すだけで民泊になる?」「自宅や空き家で始めるには何が必要?」と疑問に思う人も多いでしょう。

民泊とは、一般的に戸建て住宅やマンションなどの住宅の全部または一部を利用し、旅行者などに宿泊サービスを提供することを指します。

法律上「民泊」という一つの営業形態が定義されているわけではなく、日本で合法的に民泊を営業するには、住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出、旅館業法の許可、国家戦略特区法に基づく認定など、営業方法に応じた手続きが必要です。

この記事では、民泊の意味や仕組みから、ホテル・旅館・ゲストハウスとの違い、メリット・デメリット、実際に民泊を始める方法までわかりやすく解説します。

民泊とは?

民泊とは、住宅を活用して旅行者などを宿泊させるサービスの総称です。

例えば、次のようなケースがあります。

  • 自宅の使っていない部屋を旅行者に貸す
  • 所有している一戸建てを一棟貸しする
  • マンションの一室を宿泊施設として提供する
  • 空き家を改装して旅行者向けに貸し出す

近年はインターネット上の宿泊予約・仲介サービスを通じて、宿泊したいゲストと物件を提供するホストをマッチングする形が広く普及しています。厚生労働省も、住宅の全部または一部を活用して旅行者などに宿泊サービスを提供するものを一般的な「民泊サービス」として説明しています。

ただし、「自分の家だから自由に旅行者を泊めてお金を受け取ってよい」というわけではありません。

日本で宿泊料を受け取って宿泊サービスを営業する場合には、原則として法律に沿った届出・許可・認定などが必要です。手続きをせず営業すれば、違法民泊となる可能性があります。

民泊には主に3つの営業方法がある

「民泊を始める」といっても、実際には複数の制度があります。代表的なのが、住宅宿泊事業法(民泊新法)・旅館業法・特区民泊です。

住宅宿泊事業法(民泊新法)

一般の住宅を利用して民泊を始める際に、代表的な選択肢となる制度です。

住宅宿泊事業を行う場合、物件所在地を管轄する都道府県知事等への届出が必要です。大きな特徴は、宿泊させられる日数が年間180日までと定められていることです。また、自治体の条例によって営業できる地域や期間などがさらに制限される場合があります。

「空いている住宅を民泊として活用したい」といったケースでは、まず検討する制度の一つでしょう。

旅館業法

年間180日を超えて本格的に宿泊施設を運営したい場合などには、旅館業法に基づく営業が選択肢になります。

旅館業法では現在、営業形態を「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の3種類に分類しています。民泊型の施設では、簡易宿所営業の許可を取得して営業するケースがあります。

旅館業として営業するには、都道府県知事等の許可が必要で、施設についても法令などで定められた構造設備基準を満たす必要があります。

特区民泊

国家戦略特別区域内では、国家戦略特区法に基づく認定を受けて民泊を営業できる場合があります。

ただし、全国どこでも利用できる制度ではありません。そのため、物件の所在地が対象地域なのか、自治体がどのような条件を設定しているのかを確認する必要があります。

民泊の仕組み

一般的な民泊では、ホスト・ゲスト・宿泊仲介サービスの3者が関わります。

ホストが宿泊できる住宅を用意して仲介サイトなどに掲載し、ゲストが希望する日程の物件を探して予約します。予約が成立すると、ゲストは宿泊料金を支払い、ホストはチェックイン方法などを案内して住宅を提供します。

住宅宿泊事業法では、この仕組みに関係する事業者として「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」が位置付けられ、それぞれに役割や義務が定められています。

ホストには単に部屋を提供するだけでなく、衛生管理、安全確保、宿泊者名簿の備付け、近隣への配慮、苦情対応なども求められます。

また、一定の場合には、住宅宿泊管理業者へ管理業務を委託する必要があります。管理業者は、物件の維持保全や宿泊者への対応など、民泊を適切に運営するための業務を担います。

民泊とホテル・旅館・ゲストハウスの違い

宿泊施設にはさまざまな呼び方がありますが、法律上の分類と一般的な名称は必ずしも一致しません。

特に注意したいのが、ホテルと旅館です。現在の旅館業法では、以前の「ホテル営業」と「旅館営業」は統合され、法律上は「旅館・ホテル営業」という一つの営業種別になっています。

一般的な特徴を整理すると、次のようになります。

種類 主な特徴 一般的な利用スタイル
民泊 住宅を活用する 一棟貸し、マンション、個室など
ホテル 宿泊専用施設として運営されることが多い 個室中心
旅館 和室、温泉、食事など日本的なサービスを提供する施設が多い 個室中心
ゲストハウス 共用スペースや相部屋を設ける施設が多い ドミトリー・個室など

 

民泊とホテルの違い

ホテルは、一般的に宿泊施設として設計・運営され、フロントや客室、清掃などのサービス体制が整っています。

一方、民泊は住宅を活用するため、キッチンやリビング、洗濯機など一般家庭に近い設備を利用できる物件も多く、「その地域で暮らすように泊まる」という体験につながりやすいのが特徴です。

ただし、設備やサービス内容は物件によって大きく異なります。

民泊と旅館の違い

旅館は、和室、布団、温泉、大浴場、会席料理など、日本らしい宿泊体験を提供する施設として認識されることが多い宿泊形態です。

民泊でも古民家など日本らしい建物に泊まれるケースはありますが、基本的には「住宅を活用した宿泊サービス」という点が特徴です。

民泊とゲストハウスの違い

民泊と混同されやすいのがゲストハウスです。

ゲストハウスは、宿泊者同士が利用できる共用スペースや、複数人で一つの客室を利用するドミトリーなどを設けている施設が多く、旅行者同士の交流を特徴としているケースもあります。

法律上「ゲストハウス」という独立した営業区分があるわけではありません。施設の形態によっては、旅館業法の「簡易宿所営業」として営業しています。簡易宿所営業は、宿泊する場所を多数人で共用する構造・設備を主とする営業として旅館業法で定められています。

つまり、「民泊」「ゲストハウス」といった名称だけで適用される法律が決まるわけではない点を理解しておくことが重要です。

民泊のメリット

空き家や空室を活用できる

民泊の大きなメリットは、利用していない住宅や部屋を収益化できる可能性があることです。

例えば、相続した実家、使わなくなった別荘、自宅の空き部屋などを宿泊施設として活用する方法があります。

宿泊者に地域ならではの体験を提供できる

住宅街や古民家など、一般的なホテルが少ない場所でも宿泊サービスを提供できるのが民泊の特徴です。

ゲストにとっては観光地を訪れるだけでなく、その地域で生活しているような滞在を楽しめる場合があります。

一棟貸しなど柔軟な宿泊スタイルを作りやすい

一戸建てを丸ごと貸し出せば、家族旅行やグループ旅行などにも対応できます。

キッチンや洗濯機を備えた住宅であれば、自炊をしたい旅行者や長めの滞在を希望するゲストにも訴求できます。

地域活性化につながる可能性がある

旅行者が住宅地や地方に宿泊すれば、周辺の飲食店や小売店、観光施設などを利用する機会が増えます。

空き家対策と観光振興を組み合わせるなど、民泊を地域活性化の一つの手段として活用することも考えられます。

民泊のデメリット・注意点

民泊新法では年間180日の上限がある

住宅宿泊事業法による民泊では、宿泊させられる日数は年間180日が上限です。

さらに自治体の条例による制限が設けられる場合があるため、単純に「365日のうち180日なら好きな日に営業できる」と考えないほうがよいでしょう。

清掃やゲスト対応に手間がかかる

予約管理、問い合わせ対応、チェックイン案内、清掃、リネン交換、備品補充、トラブル対応など、実際の民泊運営にはさまざまな業務があります。

予約が増えるほど、運営業務の負担も大きくなります。

近隣トラブルの可能性がある

騒音、ゴミ出し、共用部分の使い方などをめぐって、宿泊者と近隣住民との間でトラブルが起こる可能性があります。

住宅宿泊事業者には、周辺地域の生活環境への悪影響を防ぐため宿泊者へ必要事項を説明したり、苦情に対応したりする義務があります。

初期費用や運営費が必要

所有している住宅を利用する場合でも、無料で始められるとは限りません。

家具・家電、寝具、Wi-Fi、消防・安全設備、リフォーム、清掃用品などの準備費用に加え、運営開始後には清掃費、水道光熱費、消耗品費、管理委託費、仲介サービスの手数料などが発生します。

そのため、想定宿泊料金だけを見るのではなく、稼働率と経費を含めた収支計画を立てることが大切です。

民泊の始め方

ここでは住宅宿泊事業法に基づいて民泊を始める場合を中心に、大まかな流れを紹介します。

STEP1.物件が民泊に利用できるか確認する

最初に確認したいのが、「その物件で民泊を営業できるのか」です。

住宅宿泊事業の届出では、物件そのものの要件だけでなく、自治体の条例、マンション管理規約、賃貸借契約なども確認する必要があります。

賃貸物件の場合には、民泊目的での転貸について所有者等の承諾が必要です。また、マンションでは管理規約によって民泊が禁止されていないか確認する必要があります。

STEP2.自治体や消防へ事前相談する

民泊では消防法令への対応も重要です。

必要となる消防設備などは建物の状況や利用方法によって異なる可能性があるため、設備を購入したり大規模な工事を始めたりする前に、物件所在地を管轄する自治体や消防へ相談するとよいでしょう。

観光庁の案内でも、届出前の確認事項として消防への相談や消防法令適合通知書の取得について案内されています。

STEP3.必要な設備・運営体制を整える

宿泊者が安全・快適に利用できる環境を整えます。

ベッドや布団、家具、家電、Wi-Fi、アメニティなどのほか、安全・衛生管理、宿泊者名簿、外国人宿泊者への案内、近隣トラブルへの対応なども考えておく必要があります。

住宅宿泊事業では、居室について宿泊者1人当たり3.3平方メートル以上の床面積を確保することや、定期的な清掃・換気なども求められています。

STEP4.必要に応じて住宅宿泊管理業者を選ぶ

運営方法によっては、住宅宿泊管理業者への管理委託が必要になります。

管理会社を利用すれば、清掃、宿泊者対応、トラブル対応などの運営業務を任せられる場合があります。一方で管理費用が発生するため、自主管理と委託のどちらが収支や運営体制に合うか検討しましょう。

STEP5.住宅宿泊事業の届出を行う

住宅宿泊事業を始める場合、必要事項を記載した届出書と添付書類を、住宅所在地を管轄する都道府県知事等へ提出します。

届出は原則として「民泊制度運営システム」を利用して行うこととされており、オンラインで届出や各種手続き、宿泊日数等の定期報告を行うこともできます。

STEP6.仲介サイトなどへ物件を掲載する

必要な手続きを終えたら、宿泊予約を受け付けるための準備を行います。

物件写真、宿泊料金、チェックイン・チェックアウト時間、設備、アクセス方法、ハウスルールなどを設定します。

住宅宿泊事業の仲介を他者へ委託する場合には、住宅宿泊仲介業者または旅行業者へ委託する必要があります。

STEP7.運営・清掃・宿泊者対応を行う

予約が入ったら、チェックイン方法を案内し、宿泊後には清掃や備品補充を行います。

同時に、宿泊日数の管理、宿泊者名簿、行政への定期報告、近隣からの問い合わせ・苦情対応など、法律に沿った運営を続ける必要があります。

まとめ

民泊とは、戸建て住宅やマンションなどの住宅を活用して旅行者などに宿泊サービスを提供する仕組みです。

ホテルや旅館が宿泊施設として運営されるのに対し、民泊は「住宅を宿泊に活用する」という点に大きな特徴があります。また、ゲストハウスは一般的な施設名称であり、旅館業法上の簡易宿所として営業しているケースなどがあります。

民泊には、空き家・空室を有効活用できることや、旅行者に地域ならではの宿泊体験を提供できるといったメリットがあります。一方で、法令への対応、年間営業日数の制限、清掃やゲスト対応、近隣トラブル、運営コストなども考えなくてはいけません。

これから民泊を始めるなら、「物件を探す→掲載する」ではなく、「制度を選ぶ→自治体等へ確認する→収支を計算する→物件・設備を整える→届出・許可等を行う」という順番で検討するとよいでしょう。

制度の詳細や最新情報については、観光庁の民泊制度ポータルサイトや、物件所在地を管轄する自治体の案内を確認してください。